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【新春特別インタビュー】

DP+年賀状ビジネスは終焉

半歩先をいく新しい広場を提案

プラザクリエイト代表取締役社長 大島康広

昨年 12 月号のキタムラ・浜田社長に続き、本号では新春特別企画として プラザクリエイト・大島康広社長にご登場いただいた。 依然続くコロナ禍の影響は、同社の売上にも大きく影響しているのは確かだが、 それでも当社にとって 2021 年という年は、自社の強さを、改めて感じることができた 1年であったという。2022 年を「ワクワクしている」と公言する大島社長に その理由を訊いた。

 ——昨年は、創業の原点である〝広場づくり〟に立ち返り、「みん なの広場をつくる」をスローガンに展開していくとのことでしたが、依然として続くコロナ禍の影響も含め、なかなか難しい経営だったと思います。御社にとって はどのような1年だったでしょうか?

大島社長(以下、大島で略) 当社は1昨年の夏、「みんなの 広場をつくる」というビジョンを 掲げました。これから我々が目指す方向は、写真のプリントの会社 ではなく、スマホを売っている会社でもない。みんなの広場をつくる=プラザクリエイトなんだ、という世界観を掲げました。これは、ある意味コロナ禍だったからこそ、いま示さなければという気 持ちもあったとはいえ、昨年1年を振り返ると、この新しいビジョンを掲げるタイミングとしては、 本当によかったと感じているんです。じゃあ昨年1年間で、〝みん なの広場〟がどこまで具体的に作れたんだ?ということになると思うんですけど。

 

 ——昨年のインタビューでは、 事業ポートフォリオをやるもの、 やらないものに仕分けるともおっしゃっていましたが?

 大島  はい。まず1月早々にも、 証明写真BOX事業を売却しました。元来当社は、1回手掛けた事業は簡単には手放さないんですけ ども、今後当社が〝みんなの広場〟 を作っていく上で、果たしてその事業は続けるべきなのか?という問い掛けを、我々自身にしっかりできる会社になれたということが、一番大きな変化であったと思います。この事業ポートフォリオの見直しは、現在も続行中で、証明写真BOX事業以外の分野にもメスを入れています。例えばICカード事業や写真スタジオ事業など、当社って結構いろいろなブランドを持っていますから、それらの見直しを引き続きやっていきます。一方、当社らしい〝みんなの広場〟といえるものを、事業の大 小に関係なく、会社がそれぞれの 事業の立ち位置で、ちょっと楽し い〝みんなの広場〟を掲げて動けた1年でもありました。その中には、まだ外部の方には公表できな いんですけど、7〜8割型まで出来上がっているとか、今春には皆さんに披露できるようなものが、 大きなもので2つ、小さなもので 4〜5つぐらい、用意しています。

 

 ——それはこれまでの御社のビジネスとはまったく異なるものになる?

大島 いいえ、やはり当社は、〝写真〟という言葉やキーワードからは、離れられないんです(笑)。じゃあ〝写真〟って何なんだ?というと、自分を表現することができる簡単なツールであったり、写真を何枚か重ねると動画になったり、ある人にとってはかけがえのない思い出であったり、またある人にとってはネットフリマに出品するために必要だったりと、〝写 真〟というものが使われる範囲が、デジタル化によって大きく広がり、今日にはインフラも整備されたことで、今後はそれなりの動画なども、〝写真〟の範疇に入ってくるだろうと。とくに、これから本格化する5G通信が、新しいビジネスチャンスになってくるでしょう。大容量・高画素の何かも、 我々のビジネスの範疇に入ってくると捉えています。〝写真〟とい うものを、少し広く捉えすぎと思われるかも知れませんが、そこの部分からは離れなれないと、常に思っています。

 

——すると、今春発表される何かも、社長のいう〝写真〟のカテゴリーに入る新しい形になると?

大島 結果として〝みんなの広場〟に家族で集まっていただいて、 とても素敵な時間を過ごしてもらうことで「だから写真を撮ろう」 と。その撮った写真が、5〜10年と経った時に、その人を勇気づけてくれるとか、そういうことも〝写 真〟という捉え方でいいと思うんです。ただ単にみんなで集まって飯を食おうというのではなく、やはりプラザクリエイトらし く、そこにワークショップや思い出が作れるような、 または「うちの子って、こんなことに興味があるんだ。面白がるんだ」というような、小さな子どもが発見できる〝広場〟を提供していきたい。そういった意 味では、写真業界がどうだとかカメラがどうだとか、 何か〝物〟を軸にした考え方ではないですね。そういった発 想をしてみると、新しいアイデアがいっぱい出てきています。当社は、リアルな店舗空間とオンラインとを上手く組み合わせながら、古き良きものを新しく見せて いくとか、ペーパークラフトの「つ くるんです」や、ミーティングボックスの「One—Bo(ワンボ)」 など、キチンと信頼していただけ るブランドをしっかり育てていくカルチャーも持っているので、今年は当社らしい〝見せられる年〟 になると思います。コロナ禍という時間は、やはり人と人が話したり、時にはリアルで手を握ったり、 人と人とのコミュニケーションのあり方が問われながら、それでも〝やっぱり一人では寂しい〟という、人間関係やコミュニケーショ ンのあり方が、コロナで変わったし、考える時間もできた。これはこれからの当社にとって追い風だと思っているんです。

 リアル店舗でのビジネスの中で、ひとつはっきりしたこと

——確かに、人との繋がり方って変わりましたよね。

大島 例えばZoomを使用すれば、北海道のお店の店長とも「いまからZoomやるぞ!」という感じで、自然にやれてしまう。これまでは、東京本社や関東圏のメンバーと「今日は飯でも食いながら」とリアルな会を開こうとなった時「北海道のアイツは参加できないから、ちょっと控えようか」 みたいな感じになってしまったことも事実なんですね。だから、昔は一部の人たちだけでリアルで話をしたり飯を食ったりするから、 その人たちに情報が偏りがちだっ たんですが、社長という立場で考えた時に、Zoomによって、福岡であろうが札幌であろうが、そ ういう人たちと同じレベルでディ スカッションができるようになったんです。

 

——広域展開ならではの感覚なんでしょうね

 

大島 もうひとつは、チェーンストア的な発想だとか、リアル店舗のビジネスにおいて、ひとつはっきりしていることがあります。それは、もはやお店のレジ に、いままで以上にお金が集まるとか、リアルなお店に、いままでと同じことをやっていても来店客 が増えるとか、そういったことは100%ないということ。もちろん、 リベンジ消費的な部分で、今春先から秋ぐらいまで回復することもあるかも知れませんけど、消費者の思考はオンラインが主軸になっ てきている。お店で現物を見て、 購入はオンラインでという購入方式が、これからの主流になってくるでしょう。これはどんな商品を扱っていようが、どんなサービスを提供していようが、リアルな空間、広場にとって、とても大きな共通の課題になります。また、現在小売業に従事している雇用は 1000万〜1100万人ともい われていますから、それら全ての 人たちの課題でもある訳です。だからこれからは、リアルなお店の存在価値を、どういう風にオンライ ンに組み合わせて出していくか? というところは、当社のみならず、 大きな変化の時であり、それが大変大きなビジネスチャンスに繋が ると、いまワクワクしています。

 

 ——ワクワクしているというこ とは、社長にはその具体像が見え ていると?

大島 めちゃくちゃ出来上がっていて、それはもう、7割型は出来ていますね。

 

——それは、どのような形?

大島  ......あの〜、それお話するの3月ぐらいでいい?(苦笑)。 非常に微妙な時期なんですよ。ただ、それをやることによって、新しい会社を誕生させるぐらいの事業計画なので、公表はもう少し 待ってください(笑)。

 オンラインとの融合だけでなくお店がエリア内で拠点化する

——それをやることによって、 パレットプラザ自体が変わってくるということですか?

います。  ——それは、出張撮影だけでな く、システムまでも含めて自社で 賄うということですか?

大島 パレットプラザというブランドの話ではなく、小売業として、こういう感じがあるんじゃないの?とか、こういうところが入 口なんじゃないの?といった、ひとつの問い掛けをすると思っていてください。パレットプラザが進 化を続ける方向性については、また別の話になります。ただ、そのパレットプラザという意味で、話を横に持っていくと、お店の売上が増えることはないというのが小売の前提になる訳ですから、お客様にお店に来ていただくために、 どうやってオンラインを活用して来ていただくか?それから、そこで売上がなくても、オンラインで 取れる、またはお店の方から、エリアのターゲットを絞ったところに出ていく......そういった、お店がエリアの中で拠点化することが基本になるでしょうね。

 

——例えばスクールフォトなどの撮影業務だったり、外販を含めてということですね?

 

大島 まさしく、保育園、幼稚園のスクールフォトは、そのお店のエリアの中のターゲットのひとつといえるでしょう。以前、幼稚園や保育園で写真撮影して、保護者の方に販売するビジネスは、当社でも7〜8年前、テスマーケ ティング的に展開していたことがあります。スクールフォトを手掛ける大手にシステムを提供して、プリント分を担当することもありました。ただその当時は、同時プリントだけでも店舗で月に 100万だ、年賀状の季節なら大きな店舗なら月1000万だと売上があるじゃないですか。そうすると、幼稚園、保育園相手に一生懸命がんばって写真を撮りに行って、1日拘束されても、1イベン トで2万円の売上げでした、とい う話だったんです。どうしても優先順位として大きくならなかった。その内に、幼稚園、保育園に 対するさまざまなビジネスを、いろいろな業者さんが提供されるようになり、いまやひとつのマーケットが形成された訳ですが、そこを取っただけだと、当社として、また、パレットプラザの外商ビジネスとしては、少し〝小さい〟と思ってしまったんですね。それを 〝小さい〟と思わないような、そ のマーケットに突っ込むなら突っ 込むなりの、総合的な幼稚園、保育園ビジネスにしなければならないということは、以前から考えています。

 

 ——それは、出張撮影だけでな く、システムまでも含めて自社で 賄うということ?

大島 オンラインで写真を売るためのシステムなんて、いろいろな会社が参入しているし、当社もすでに持っています。だからそう じゃない。幼稚園、保育園に営業して、カメラマンを派遣して、店舗のスタッフがやり取りするだけ なら、それこそ「つくるんです」 を月に20万円売っている方がいい。もし我々が、幼稚園、保育園をエリアの中でのターゲットの優先順位を上げるために徹底的に取り組むとすると、もう少し総合的な取引というか、「パレットプラザの商品、サービスって魅力的だな」といってもらえるような、総合的なお付き合いを前提にしないと、そこに多くの労力を費やすことは難しいでしょう。

 ——スクールフォトだけでなく、お店がターゲットとするものは、エリアの特徴によって変わってくると思うんですけど

 

大島 ただ、パレットプラザというブランドが、どういうターゲットでエリアを攻めるか?というところに関しては、いろいろな業種をエリア別に選定できるほど 余裕はありません。しっかりターゲットを絞って営業に行くとか、 DMを出して、そのターゲットに1回店頭に来ていただくとか、そういったマーケティング活動を含めて、いろいろな業種をエリアごとに選別することは、個店レベル では難しいと思います。  

 

——そこを本部がサポートする?

 

大島 そうです。いまパレットプラザは、ほぼ 100%がフラン チャイズ店になっているんですけ ど、その方々が外商をやる、店か ら外に出て飛び込み営業するなんて、なかなかできませんよ。そういう方々が動きやすいように、勇 気が出せるようなツール、サポー トを整えるのが、本部の仕事だと考えています。この春〜夏ぐらいからしっかり動いていかないと、 パレットプラザの店舗数は、ますます減少する一方、ということに なってしまいますから。

 

 ——やはり店舗数は減ってきているんですか?

 

大島 昨年の6月から、店舗は減っていません。昨年の6月がフ ランチャイズ化の最終段階で、フランチャイズ化できなかった店舗は、それ以前に閉店しています。 ですから、フランチャイズ化が完了してからは、1件も閉店してい ません。

 DP+年賀状ビジネスは終わりを迎えたが、パレットプラ  ザは終わっていない

——それは各オーナーさんとも がんばっていらっしゃるんですね。ただ、やはり昨年も、コロナ の影響は各店にあったと思うんで すが

 

大島 ありすぎるほどありま す。2019年と比べると、売上は通年で73〜74%ぐらい。 80%もいきませんでした。いま当社では、前年比ではなく、コロナ前の 2019年比で考えるようにして いるので。ちなみに、昨年もコロ ナ禍だった12月単月を見ると、店舗の既存店前年比売上は94%となっています。年賀状は、店頭販売の枚数ベースで前年比88%。年賀状については、前年の売上ベースで100を目指そうと、店舗数が減りながらも、いろいろと試行錯誤 したのですが、目標値は達成できませんでした。これまでプリントビジネスは、年間の谷間を、年末の年賀状によって帳尻を合わせるのがパッケージでした。一昨年 までは、売上ベースで単価を上げたりしてなんとか形になっていた んですが、今シーズンの結果を見ると、いわゆるDP+年賀状というビジネスモデルは終わりを迎えたということだと思います。  

 

——そうなると、今度は何で谷を埋めるか?ということになると 思うんですけど

 

大島 当社の場合は、「つくるんです」のような付加価値商材を店頭販売するのもあるし、近くのイベント催事で売上を伸ばしているお店もあります。私が敢えて〝D P+年賀状〟といっているのは、 みなさんがよく知っているDP業 界と、それが年賀状で支えられていたという形が〝終わった〟といっているのであって、パレットプラザが終わったとはいっていませ ん。そこは「新しいパレットプラザを始めなきゃ」ということでいいんじゃないか?と思います。しかし、このタイミングにイコール で、小売のDXなどが重くのし掛 かっている。これを悲劇的に捉えるか?それともビジネスチャンス だと捉えるか?それだけのことだ と思っているんです。

 

 ——で、御社としてはそれは チャンスなんだと

 

大島 結局コロナって、悲劇的な出来事じゃないですか。そういう時に「当社は、こういう時こそ強い」とは、いうのも憚れたんですけど、もう〝前を向く〟という意味では、当社はこういうタイミングに強い会社なんだと、つくづく思います。業種を問わず、全ての業界で大きな会社がやってきたことが、この3〜5年で激しく新陳代謝したじゃないですか?ですからこれからは、これまではあり得なかったようなものが生まれてくるかも知れません。  

 

——すると、今春発表される何かも、非常に楽しみですね

 

大島 私がビジネスを実践する上で、常に意識していることは、 物事が一気に変わることを、人々は嫌いますし、当社はこれまでも、 まったく新しく提案したビジネスが受け入れられるまで時間が懸か ることは十分理解していますから、当社が今後〝新しい広場〟を お見せする時には、世の中の半歩先をいっていると思っていただい た方がいいかも知れません(笑)。

 

PROGRESS/2022/01月号掲載
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