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【特別インタビュー】

コロナを乗り越えて
さらなる成長領域へ

キタムラ代表取締役社長  浜田宏幸

弊誌では、毎年恒例の新春企画として、キタムラ・浜田社長へのロング・インタビューを 続けてきたが、今回は新年号を前に、年末特別企画として、浜田社長に登場していただいた。 感染者数こそ減少を見せているものの、依然として不透明なコロナ禍ではあるが そんな中でも同社は売上を伸ばすことに成功しているという。

2022 年に向けても、さらなる成長と飛躍を計画しているという浜田社長に そのための施策、経営に対する考え方を訊いた。

——如何でしたか?この1年は?

浜田社長(以下、浜田で略) 最初に予算を組んだ時は、想像するしかなかったんですけど、年初の1月、2月ごろからコロナがまた酷くなり始めましたよね。ただ、それでも昨年の4月、5月の時は、もう1000店以上が休業状態でしたから、それに比べれば、出だしはまだましだろうと。また、夏場はオリンピックがあるから、そこで少しはよくなるかな?ただ、その先は見えないなぁ...という感じで予算を作っていたんですけど、8月の感染爆発は、まったく予想外の事態でした。

 

 ——それは全産業が同じように感じていたでしょうね

浜田 オリンピックこそ無事開催されましたけど、結局みんなテレビで観るだけになってしまった。8月〜9月頭ぐらいまでの感染状況は本当に酷かったので、当社内でも、この時期に感染した人の数が、それまでの1年間の感染者数よりも多かったぐらいです。 ですから、去年とは逆になりまし たよね。去年の4月、5月は、初めての緊急事態宣言で、みんな初体験だったから、過剰なまでに恐 怖を感じて、もの凄く広い範囲でみんな休業まで追い込まれてしま いましたけど、6月以降はその反動もあり、徐々に回復基調が見えてきた。それが今年はまるっきり逆の話になった格好です。

 

 ——すると、今年も結局店舗の休業や営業時間短縮は多かった?

浜田 いいえ。去年の時のような一斉休業はありませんでした。 大型ショッピングセンターやスーパーの一部では、営業時間が短縮されたり、土日祝日の営業が休止されたりしたので、そういうところに出店しているテナント店舗は 右にならえとなりましたけどね。で、9月で緊急事態宣言も終わって10月には感染者数が激減したんだけど、じゃあ商売の方も一気に戻っていったか?というとそうでもなくて、なんだかジワジワとなだらかに上向いていきました。

 

 ——感染減少後から今日までの市場の動きは、みんなが思い描い ていた姿とは異なるものでした

浜田 やはり、人が動いていないから、デジカメプリントなどは、パッタリ動きませんでした。 2020年は、2019年の50〜60%減で推移しましたけど、今年もこのダウントレンドは続いています。一方、カメラ販売に関しても、新製品発表が続いたので、予約は取れているんですけど、問題なのは品不足です。

——やはり半導体不足?

浜田 半導体を含めた一部部品の不足と、コロナによる工場閉鎖や稼働縮小のダブルパンチですね。いまは、ニコンの「Z9」と ソニーの「α7IV」の2機種については、予約は順調にいただいているんですけど、その予約分の全てをお客様のお手元に届けるには、いったいどれぐらいかかるのか?(苦笑)というのが、これからの心配事ですね。それから、年末恒例の年賀状ですが、これはこの10年ぐらい、早くできるようになった分、注文の山が後ろ(年末) にずれ込んできたんですけど、そ の一方では、ネット販売業者が9月、10月ぐらいからワイワイと騒ぎ始める傾向があったので、今年は試しに当社でも、11月頭〜11月15日までの2週間、 25%OFFになる「超早割」キンペーンを実施。これが結構反応が良くて、当たりました。ただ、超早割キャンペーン以降の、例年開催している早割キャンペーンの注文数は若干減少。これは、超早割に食われた格好だと思います。ですので、通期のトータルで考えると、前年比微増といったところです。

——とくに御社の場合 は、〝年末の駆け込み需要も、キタムラなら対応できます〟というコマーシャルを、ここ2年ぐらい積極的に流していたじゃないですか?

浜田 もちろん、駆け込み需要には今年も対応します。それに加えて、今シーズンに注力しているのは、 前述した前倒し施策と、宛名印刷サービスになります。とくに宛名印刷に関しては、当社でも数年前から対応していますが、なんだか宛名印刷は、ネットサービス業 者でしか対応していないと勘違いされているお客様が多いので、〝去年届いた年賀状をそのままお持ち いただいたら、宛名印刷まで一緒 にできますよ〟と呼びかけていま す。

——そのテレビコマーシャルも流していますよね

浜田 この部分が、駆け込み需要と合わせてどれぐらい伸びるか?期待しています。

 

——あの宛名印刷サービスは、 文字読み込みのOCRソフトとかを使っているんですか?それとも人力?

 

浜田 両面の画像データは残していますが、住所と名前は人が打ち込んでいます。手書きの住所も多いので、自動読み取りでは対応し切れません。もちろん、そこまで店頭で処理するのは困難なので、提携業者に外注しています。

地方の小規模店を閉店する一方 大都市圏への新規出店を促進

浜田 もうひとつ、今年大きく動かしたのは、地方の多すぎるお店。とくに、地方都市の小型店は、 コロナの影響もあって、なかなか 成り立たなくなってきました。もう2〜3年は持ち堪えるか?と思っていましたが、デジカメプリ ントなどがあまりにも急激に減少したので、今期に入る前の2月、 3月で、かなりのお店をクローズさせました。

 

 ——それはどれぐらい?

 

浜田 この1年間で閉店した「カメラのキタムラ」は72店。地方都市の小規模店が中心です。ただ、その反面、大都市圏のターミナル拠点を中心に、新規出店を進めました。所沢や大森、松戸、川崎、阿佐ヶ谷、田無、関西では阪急西宮などの駅ビルや駅近になります。駅ビル側も、コロナ禍で飲食系やアパレル系がバンバン抜けている現状なので、我々にも割といい条件で話を持ってきてくれるんですよ。

 

——それじゃあ大都市圏への出店は、いまが狙い目なんですか ね?

 

浜田 人通りは多いし、ニーズはありますからね。ですから、プリントと証明写真と中古カメラの買取りで出店すると、かなり利用していただけています。このように、この1年は、地方を減らして、 人口の多い大都市圏にシフトし始めているという動きになりまし た。この流れは、基本的には今後も続いていくでしょうね。コロナの影響は大きいです。また「スタジオマリオ」も、三元茶屋の西友の中とか、マリオの中にプリントの注文コーナーを設けた形で、大都市圏に何店か出店しました。

 

——実際のプリントはどこで処理するんですか?  

 

浜田 マリオの中で。

——あぁ、ドライで!?

浜田 そうドライで。いまは、導入できるところはフィルム現像機も入れていますけど、ドライフロンティアで出店するケースが多いです。水の配管もいらないし、 場所も取らない。処理能力的にも、そこまでハイスペックでなくても対応できます。いまや、銀塩フロンティアの大量処理モデルを必要とする店舗は、当社でも上位100店ぐらいでしょうね。

カメラの購入目的が「動画を撮るため」に変わってきた

浜田 最近、カメラを販売していて〝変わったなぁ〟と感じるのは、動画を撮る目的で、高級機を購入されるお客様が増えている点です。

——カメラを購入する理由の上位に「動画」がある?

浜田 当然、写真も撮るけ動画も撮りたい。あるいはユーチューバーを目指しているとか、 動画を主とするお客様も増えています。そこで当社では、毎年開催している従業員の写真コンテストで、創業以来初めて、動画だけのコンテストを開催したんです。

 

 ——動画〝だけ〟?

浜田 動画を撮りたくてカメラを買いにくる人が増えているんだから、従業員がその機能を知ら ないようでは話にならない。まずは従業員自身が動画を撮ってみて、お客様の質問にもキチンと答えることができる、アドバイスできる環境を作ろうと企画したんです。タイトルは「1分ムービー コンテスト」としました。1分以内であれば、5秒でも構わないと。時間の敷居を下げたことで、400本近い作品が集まりました。趣味としている天体写真を編集した凝った作品から、日常を切り取った子どもの何気ない一コマなんだけど、凄く面白い作品もあって、こういう作品を見せれば、 お客様も〝自分も動画を撮ってみたい〟と思ってもらえるのでは? と感じています。お店もお客様も〝これは面白い、こういう動画なら撮りたい〟と感じられる作品が多ければ多いほど、そういうところから、次の写真・映像に関する新しいビジネスが見つかってくるのではないでしょうか?  

 

——しかし、動画が主な購入理由になってくると、その売り方も 変わってきますね。簡易照明のセット販売とか

 

浜田 当然、もう売ってます。 カメラを展示しているキタムラのほとんどの店舗では、リングライ トなどの周辺機材も併せて販売しています。また、お客様が欲しいもの、便利なもの、お困り事を解決する手段をどんどん提供していくという意味では、撮り方教室などもひとつのビジネスになるでしょう。静止画に限らず、動画にも目を向けることで、写真・映像 の新しいビジネスを、いろいろな角度から見出していきたいですね。動画を含めた写真のある生活 が広がらないと、我々のビジネスはなくなる一方ですから。

商売人にとって、〝コロナだ から〟は言い訳にならない

——では、2022年は、どのように考えていますか?

浜田 もうちょっとコロナは治って欲しいね(笑)。まぁ、12月は年賀状が予想通りに終わってくれれば、1月〜3月は粛々とやることをやって、来期の準備に取りかかれれば、と考えています。コロナが収束したと仮定すると、来期はデジカメプリントや就活用、パスポート用など証明写真もジワジワではあると思いますが戻ってくるでしょう。何があるかは分からないけど、巨大な第6波がやってくるのでは?とか、単に先行きを不安視しているだけでは、予測は立てられません。基本的にはあらゆる業種で、この2年間のコロナの悪影響がだんだん弱っていくことを前提に、回復した分だけ、商売は増収増益に持っていけるだろうと考えています。 コロナの影響による商品の品不足も徐々に回復していくでしょうし、旅行やイベントが回復すれば、 写真を撮る機会も増えるはず。去年は助成金や家賃の支払い延長など、みなさんの力に助けられて乗り越えることができたんですが、 今年は助成金もなかったけど、売上を回復させて、自力で増収増益にすることができたので、来年はさらに売上を伸ばしていくことができると思います。〝コロナなんだから売上がなくてもいい〟なん て、言い訳にもなりませんから。

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